遺言を残すには

自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言が必要なケース

財産がある限り、遺言を残しておくのが望ましいと思われますが、特に以下のような場合はなおさらでしょう。

1.夫婦に子がないとき
夫が死んだときに夫婦に子がなければ、当然、妻が全財産を相続するものと思っている人がいます。しかし、夫に兄弟姉妹があれば、妻の相続分は4分の3にとどまり、残りは夫の兄弟姉妹に行ってしまいます。このような事態を避けるためには「全財産を妻に相続させる」という遺言をしておかなければなりません。長年添い遂げたパートナーへの感謝のしるしとも言えますね。

2.相続人同士が疎遠だったり仲が良くないとき
円満でない親子関係や子ども同士のほか、先妻の子と後妻の間など、どうしても感情的になりやすい関係というものがあります。このような場合、遺言できちんと財産の分け方を決めておかないと、遺産分割のときに喧嘩が始まってしまわないとも限りません。

3.相続人以外に財産を与えたいとき
夫の死後その嫁が亡夫の親の面倒を見てきたような場合、その親が死亡しても遺産は亡夫の兄弟姉妹が相続し、嫁の相続分はありません。気の毒な話です。こういうときのために亡夫の親は、遺言で相応の財産を嫁に贈与することができます。このほか内縁の配偶者なども相続人ではないので、同様のことがいえます。

4.相続人がいないとき
この場合の遺産は、特別な事情がない限り国庫に帰属することになっています。そこで親しい人や世話になった人にあげたり、お寺や教会、ユニセフ等に寄付するべく遺言を残しておくことが考えられます。

自筆証書遺言の問題点

遺言は要式行為ですので、決められた形式を踏まないと効力を発揮しなくなってしまいます。自筆証書遺言には次のような要件を備えている必要があります。

1.全文の自書、2.日付の自書、3.氏名の自書、4.押印

ここで問題なのは、その方式が厳格に定められているため、形式的にも内容的にも不備が生じやすいという点です。そして形式や内容に不備がある場合、遺言が無効とされたり効力をめぐって紛争が生じたりといったことが起こり得ます。やり切れないのは、そのとき既に本人はこの世に居ないため、永久にその真意を確認することができないということです。逆に本人の立場からいえば、自分の死後、自分の最後の希望が叶えられないかもしれないということです。ほかにも、せっかく書いた遺言が本当に発見されるだろうか、何者かに破り捨てられはしないだろうかと、心配は尽きません。また、自筆証書遺言は開封するときなどに家庭裁判所の関与を必要とします。

公正証書遺言のすすめ

これに対し、公正証書遺言は、公証人といわれる人が遺言する人の話を聞いて作成するものです。公証人とは、裁判官・検察官・法務局長など法律実務に長く携わり、法務大臣から任命された法律の専門家です。このような人が作成してくれるわけですから、よほど安心して大丈夫だろうということです。しかも、公正証書遺言の原本は、公証役場で半永久的に保管されますから、紛失や内容の改ざんのおそれもありません。家庭裁判所の関与も不要です。このように公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べいろいろな利点があります。なお、自分の考えている遺言を的確に公正証書にするには、それなりの知識や理解が必要なのは事実です。公証人との打ち合わせのために、何度か公証役場へ足を運ぶ必要もあるでしょうし、証人2人の立会いも必要です。そこで当事務所が、依頼者様と公証役場との間を取り持ち、希望通りの遺言を残せるようお手伝いいたします。ひとりで公証人に会いに行くのは気後れするという向きにも、敷居の低い行政書士がきちんとお供しますので、ずい分気を楽に持てるのではないでしょうか。

公正証書遺言の必要書類

※以下は一般的な例ですが、実際に公正証書遺言を作成される際は、必ず管轄の公証役場にご確認ください。遺言の内容によっては必要とされない書類・資料等が変わる場合があります。

遺言をされる方の印鑑登録証明書

印鑑登録証明書等の官公署発行の証明書等は公正証書作成日前3ヶ月以内に発行されたものが必要です。

財産を引き継がせる相続人との続柄が明らかとなる戸籍謄本・除籍謄本等

必ずしも遺言者本人の戸籍謄本だけで足りるとは限りません。遺言の内容によっては、相続人の現在戸籍や相続人が除籍されている戸籍(改製原戸籍)謄本等が必要となることもあります。

相続人ではない方に財産を引き継がせる(遺贈する)場合には、その方(受遺者)の正確な氏名、生年月日、住所等を明らかにできる資料

その方(受遺者)について、次の①から③のいずれか。
①戸籍謄本、②住民票、③運転免許証(コピー)

遺言者の財産の内容と価額を特定するための資料

ア.不動産(土地・建物)が相続財産である場合
(ⅰ)その土地・建物の固定資産税等課税明細(通知)書
(ⅱ)その土地・建物の登記事項証明(登記簿謄本)

イ.預貯金、株式、投資信託などが相続財産である場合
預貯金、株式、投資信託の概要(金融機関・支店名、預貯金の種類、口座・証券番号、概ねの残高・時価等)のメモ。できれば、通帳や証券の一部(支店名、口座番号・証券番号の記載されている面)のコピー。特に、特定の預貯金を特定の方に相続させるとの遺言では、口座番号までも正確に記載しておく必要があります。

証人となられる方の氏名、住所、生年月日、職業記載のメモ

その方(証人)について、次の①から③の、いずれか。
①戸籍謄本、②住民票、③運転免許証(コピー)

未成年者や遺言者と近い親族の方などは証人となれません。証人をしてもらう適当な方が見あたらない場合には当事務所に御相談ください。

遺言執行者の氏名、住所、生年月日記載のメモ

遺言執行者は、遺産を引き継ぐ相続人・受遺者や証人であっても差し支えありません。証人や相続人・受遺者ではない方を遺言執行者に指定される場合には、できれば、その方(遺言執行者)について、次の①から③の、いずれか。
①戸籍謄本、②住民票、③運転免許証(コピー)

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